介護保険と介護施設でのジェネリック薬のカバー:正確な支払い構造を理解する

介護保険と介護施設でのジェネリック薬のカバー:正確な支払い構造を理解する

介護保険は、高齢者が介護が必要になったときに施設や在宅で受ける「介護サービス」の費用をカバーする保険です。でも、ジェネリック薬や他の処方薬は、この保険では一切カバーされません。多くの人が勘違いしていますが、介護施設に住んでいても、薬の費用は別の保険が担当します。

介護保険は薬をカバーしない理由

介護保険がカバーするのは、「日常生活の手助け」です。食事の準備、入浴、着替え、移動の支援など、医療行為ではない日常的なケアが対象です。薬を飲むことは、医療行為に該当します。だから、薬の費用は医療保険の範囲に入ります。

アメリカの医療制度では、この区別がはっきりしています。カリフォルニア州保険局の公式説明によると、介護保険は「介護施設でのスキルド・インターキーミエート・カスタディケア」を対象とし、医療行為(医師の診察や薬の処方)は除外されています。Triage Healthのガイドも明確に述べています:「介護保険は、薬の費用をカバーしません。施設で生活していても、薬はあなたの医療保険で支払われます」。

このルールは1970年代から続いています。2006年に始まったメディケアPart D(処方薬保険)によって、この仕組みはさらに明確になりました。それまで、多くの高齢者が薬を自分で全額負担していました。現在では、介護施設にいるメディケア加入者の82.4%がPart Dで薬をカバーされています。

ジェネリック薬は誰が支払うのか?

介護施設で処方される薬のほとんどはジェネリックです。効果はオリジナルと変わらず、価格は3分の1から5分の1。医療現場では、ジェネリックが標準になっています。でも、誰がその費用を払うのか?

答えは「メディケアPart D」です。2020年の研究によると、介護施設に長期滞在するメディケア加入者の薬の費用の82.4%はPart Dが負担しています。次に多いのはメディケイド(11.2%)、そして個人負担(8.9%)です。私的保険はわずか8.5%に過ぎません。

Part Dは、ジェネリック薬とブランド薬の両方をカバーしますが、ジェネリックにはコペイメントが低く設定されています。つまり、ジェネリックを使えば、自分が支払う金額がぐっと減るのです。施設の薬局は、Part Dのフォーミュラリー(カバー薬品リスト)を確認して、どの薬が使えるかを判断します。

フォーミュラリーの壁:カバーされない薬の問題

Part Dはすべての薬をカバーするわけではありません。各保険プランは「フォーミュラリー」というリストを持ち、その中にない薬は原則としてカバーされません。ジェネリック薬でも、リスト外なら自己負担になります。

この問題は特に深刻です。ある研究では、介護施設の患者のうち、約10%が薬のカバーがない状態で生活していると報告されています。彼らは、薬を自分で買うか、一時的な助成金に頼るしかありません。薬が届かないことで、病状が悪化するケースも実際に起きています。

さらに、Part Dプランは、フォーミュラリー外の薬を180日間だけ一時的にカバーする義務がありますが、多くのプランはこのルールを守っていません。コストがかかるからです。結果として、患者は「必要な薬が手に入らない」状況に陥ります。

高齢者がメディケアPart Dの光の流れを受け、薬の費用が正しく支払われる様子。

介護施設の運営側の負担

薬の支払いが複数の保険プランに分散しているため、施設側の管理は非常に複雑です。新しく入所した人の薬の保険がどれなのか、そのプランが施設の薬局と提携しているか、フォーミュラリーにどの薬が載っているか--これらをすべて確認しなければなりません。

2019年の調査では、78%の介護施設が、薬の保険管理に週10〜15時間も費やしていると答えています。年間で約2万8,500ドルのスタッフ時間コストが発生しているのです。薬の処方遅れの平均は3.2日でしたが、専門の薬局担当者を配置した施設では0.7日まで短縮されました。

そのため、優れた施設は、電子システムで複数のPart Dプランのフォーミュラリーと連携し、薬の確認を自動化しています。家族や患者が「この薬は保険で出るの?」と聞いたら、スタッフが即座に答えられる体制が求められます。

2025年からの変化:自己負担上限が導入

2022年に成立したインフレ抑制法により、2025年から大きな変更が入ります。メディケアPart Dの年間自己負担上限が2,000ドルに設定されます。つまり、いくら薬代が高くても、1年で2,000ドル以上は支払わなくて済むようになります。

これは、特に薬をたくさん飲んでいる高齢者にとって大きな救いです。また、フォーミュラリー外の薬の申請は、72時間以内に処理しなければならなくなりました。これにより、薬が届かない期間が大幅に短縮されます。

さらに、ジェネリック薬の利用率は90%にも達していますが、薬の総支出のうちジェネリックが占める割合は25%に過ぎません。これは、ブランド薬が高価であることを示しています。ジェネリックを積極的に使うことで、患者も保険もコストを抑えられるのです。

農村の介護施設から薬の供給が断たれ、ジェネリック薬だけが希望として輝く様子。

今後の課題:農村部の薬局不足

都市部では、多くのPart Dプランと提携する介護専門薬局があります。しかし、農村部ではその数が限られています。22%の農村部介護施設が、「提携可能な薬局が見つからない」と報告しています。その結果、薬が届くまで数日〜数週間かかるケースも。

この問題は、単なる「物流」の問題ではありません。薬が届かないことで、病気が悪化し、入院が必要になる可能性があります。結果として、医療費はさらに増えるのです。

家族がすべきこと:薬の保険を確認する

家族がすべきことは、入所前に「薬の保険」を確認することです。

  1. その人がメディケアPart Dに加入しているか?
  2. 加入しているプランのフォーミュラリーに、現在飲んでいる薬は載っているか?
  3. ジェネリック薬に変更できるか?
  4. フォーミュラリー外の薬が必要なら、例外申請の手続きを知っているか?

施設のスタッフは、すべてを代わりにやってくれるわけではありません。家族が情報を集め、薬の継続を守る責任があります。薬が止まれば、命に関わる場合もあります。

まとめ:介護保険と薬の関係を正しく理解する

介護保険は、薬をカバーしません。これは、多くの人が誤解している点です。薬の費用は、メディケアPart Dが主に担っています。ジェネリック薬は、コストを抑えるための最適な選択肢です。

しかし、フォーミュラリーの制限や農村部の薬局不足、保険加入漏れの問題が残っています。2025年の自己負担上限導入は大きな進歩ですが、完全な解決ではありません。

大切なのは、薬の保険を「誰が」「どうやって」支払っているのかを、事前に理解し、家族と施設が協力して管理することです。薬が届かないことは、介護の質そのものを低下させます。正しく情報を集め、行動することが、高齢者の命を守る第一歩です。

介護保険でジェネリック薬はカバーされますか?

いいえ、介護保険はジェネリック薬を含むすべての処方薬をカバーしません。薬の費用は、メディケアPart Dやメディケイド、または私的医療保険が担当します。介護保険は、入浴や食事の支援などの「介護サービス」のみを対象としています。

介護施設で薬をもらうにはどうすればいいですか?

介護施設にいる人は、メディケアPart Dに加入している必要があります。施設の薬局は、その人の保険プランのフォーミュラリーを確認し、カバーされる薬を処方します。ジェネリック薬は通常、コペイメントが安いため、優先的に使われます。保険が不明な場合は、施設の薬局担当者や社会福祉士に相談してください。

フォーミュラリーに載っていない薬はどうなりますか?

フォーミュラリーに載っていない薬は、原則として保険で支払われません。しかし、2021年以降、介護施設の患者には72時間以内に例外申請が処理される義務があります。家族や医師が「この薬がなければ健康状態が悪化する」と証明すれば、保険が一時的にカバーする可能性があります。ただし、すべてのプランが積極的に対応するわけではありません。

ジェネリック薬とブランド薬の違いは?

ジェネリック薬は、ブランド薬と同じ有効成分・効果・安全性を持ち、価格は3分の1〜5分の1です。介護施設では、90%以上の処方がジェネリックです。保険もジェネリックを推奨し、コペイメントを低く設定しています。ブランド薬が必要な場合、医師が理由を説明し、例外申請を行う必要があります。

2025年から薬の支払いはどう変わる?

2025年から、メディケアPart Dの年間自己負担上限が2,000ドルに設定されます。つまり、薬代がいくら高くても、1年で2,000ドル以上は支払わなくて済みます。これは、薬をたくさん飲む高齢者にとって大きな安心材料です。また、フォーミュラリー外の薬申請も72時間以内に処理されるよう義務化されています。

農村部の介護施設では薬が届きにくいと聞きましたが?

はい、農村部の22%の介護施設が、複数のPart Dプランと提携できる薬局が見つからないと報告しています。その結果、薬の配送に数週間かかるケースもあり、患者の健康に影響が出ています。都市部では8%しか問題がないのに対し、農村部では深刻な「薬のアクセス格差」が存在します。

長谷川寛

著者について

長谷川寛

私は製薬業界で働いており、日々の研究や新薬の開発に携わっています。薬や疾患、サプリメントについて調べるのが好きで、その知識を記事として発信しています。健康を支える視点で、みなさんに役立つ情報を届けることを心がけています。