アメリカのFDAが公開している認可ジェネリック医薬品のリストは、ブランド薬と全く同じ成分で、価格が安いにもかかわらず、一般のジェネリック医薬品とは違う仕組みで市場に出回っている製品の正体を知るための唯一の公式情報源です。でも、このリストを見ても、なぜか薬局で手に入らない。なぜか価格が下がらない。そんな疑問を抱く人は多いはずです。
認可ジェネリックとは何ですか?
認可ジェネリックは、ブランド薬の製造会社が自社で作って、ブランド名を外して売っている薬です。成分、用量、効果、安全性はブランド薬とまったく同じ。見た目が違う(色や形が違う)ことはあっても、中身は100%同じです。これは、通常のジェネリックとは根本的に違います。
普通のジェネリックは、別の会社がブランド薬の特許が切れた後に、FDAに「同じ薬です」と証明して承認を受けたものです。でも認可ジェネリックは、ブランド薬の製造会社が、自社の新薬申請(NDA)を使って、そのままジェネリックとして売っているのです。つまり、ブランド会社が自分たちで「安い版」を出しているんです。
例えば、Pfizerが製造する「ARTHROTEC」(関節痛の薬)の認可ジェネリックは、Pfizer自身が製造し、ラベルに「ARTHROTEC」と書かずに「アセトアミノフェン+ディクロフェナク」とだけ書いたもの。同じ工場で、同じ機械で、同じ薬を、違うラベルで売っているのです。
なぜFDAがこのリストを公開しているのか
2003年の米国メディケア法で、FDAに「認可ジェネリックのリストを公開せよ」と法律で義務づけられました。その目的は、市場の透明性を高めること。ブランド会社がジェネリック参入を恐れて、自社で認可ジェネリックを出して価格を抑え、真のジェネリックメーカーを排除するという戦略を、公に見える形にしたのです。
このリストには、以下の情報が載っています:
- ブランド薬の商品名(例:ACTIQ)
- 薬の形と強さ(例:1200マイクログラムのロゼンジ)
- 製造会社(例:Cephalon, LLC)
- 認可ジェネリックが市場に出てきた年月(例:2006年9月26日)
このリストは、PDFファイルで毎四半期更新されています。2025年10月10日版が最新です。ファイルのサイズは約1.09MB。見づらいと感じる人もいるかもしれませんが、これが唯一の公式情報です。
このリストはどこで見られるのか
このリストは、FDAの公式サイトのこのページで見られます:
https://www.fda.gov/drugs/abbreviated-new-drug-application-anda/fda-list-authorized-generic-drugs
このページにアクセスすると、「FDA Listing of Authorized Generic Drugs」という見出しの下に、最新のPDFファイルへのリンクがあります。それをクリックしてダウンロードしてください。PDFは日本語対応していませんが、薬の名前や数字は世界共通なので、内容は読めます。
このページには、リストの使い方や注意点も詳しく書かれています。特に重要なのは、「このリストは、製造会社がFDAに提出した年次報告に基づいて作られている。薬が今も売られているかどうかは、このリストではわからない」という点です。
このリストの大きな弱点
多くの人がこのリストを見て「これで薬局で買えるはず!」と思って、薬局に問い合わせるのですが、実際には手に入らないことが多いです。なぜでしょうか?
理由は一つ。このリストは「市場に出たことがある薬」を記録しているだけで、「今も売られている薬」を記録していないからです。
たとえば、2020年に製造された認可ジェネリックが、2023年に生産を中止したとします。でも、FDAはその薬がもう売られていないことを知りません。製造会社が「中止しました」と報告しなければ、リストにはずっと「2020年から販売中」と表示されたままです。
薬局のスタッフがこのリストを見て「これがありますよ」と言っても、実際には在庫がなく、仕入れられない状態になっている可能性が高いのです。
2023年の全米小売薬局協会の調査では、回答した薬局の68%が「このリストは、実際に薬を仕入れるためには使いにくい」と答えています。一方で、82%は「競合他社の動きを調べるには役立つ」と言っています。つまり、これは「戦略分析のツール」であって、「購入ガイド」ではないのです。
認可ジェネリックと通常のジェネリックの違い
この2つは、似ていて、まったく違うものです。
| 項目 | 認可ジェネリック | 通常のジェネリック |
|---|---|---|
| 製造元 | ブランド薬の元の会社 | 別のジェネリックメーカー |
| FDA承認ルート | 新薬申請(NDA) | 簡略新薬申請(ANDA) |
| 価格 | ブランド薬より安いが、通常のジェネリックより高いことが多い | ブランド薬の30~80%安 |
| 市場参入タイミング | ジェネリック参入と同時に、またはその直前に登場 | 特許切れた後、最初に承認された会社が180日独占 |
| リスト掲載先 | FDA認可ジェネリックリスト | オレンジブック(Orange Book) |
オレンジブックは、通常のジェネリックの「治療的に同等」という評価が載っているリストです。でも認可ジェネリックは、ここには載っていません。なぜなら、NDAで承認されているので、ANDAの評価対象ではないからです。
実際に薬を手に入れるにはどうすればいいか
このリストを見て「これ、安いかも」と思っても、それを薬局で手に入れるには、別の方法が必要です。
まず、リストで見つけた薬の薬品コード(NDC)を調べます。NDCは、薬の製造会社、商品名、強さを数字で表したコードです。FDAのNDCディレクトリで検索できます。
次に、そのNDCコードを、薬の卸売業者(例えばMcKesson、AmerisourceBergen)のカタログで確認します。ここでは、実際に在庫があるかどうか、価格はいくらかがわかります。
あるいは、薬局の在庫システムに登録されている薬のリストと照らし合わせるのも有効です。多くの薬局は、FDAのリストよりも、卸売業者のデータベースを優先して使っています。
つまり、FDAのリストは「何が市場に出たか」を知るための「過去の記録」。薬を買うには、「今、何が在庫にあるか」を知るための「現在のデータ」が必要です。
なぜ認可ジェネリックは価格が下がらないのか
「同じ薬なのに、なぜ認可ジェネリックは普通のジェネリックより高いの?」という疑問は、とても自然です。
理由は、ブランド会社が「ジェネリック参入を防ぐ」ために、認可ジェネリックを「価格を下げすぎない」ように出しているからです。
たとえば、ある薬の特許が切れて、ジェネリックが参入するとします。ジェネリックメーカーは、最初の180日間、独占販売権を得て、高値で売れます。ブランド会社は、その間に「自分たちの認可ジェネリック」を市場に出して、価格を少し下げるのです。すると、ジェネリックメーカーは「もう価格を下げられない」となり、結局、患者が得られる割引は小さいままになります。
ハーバード大学のAaron Kesselheim教授は、2020年の論文で「認可ジェネリックは、消費者にとってほとんど節約にならない」と指摘しています。実際、多くの認可ジェネリックは、ブランド薬の価格の10~20%安程度。通常のジェネリックは、70%安になることもあります。
今後どうなる?
FDAは、2026年半ばまでに、このPDFリストを「検索可能なオンラインデータベース」に変える予定です。これで、薬の名前やメーカーで簡単に検索できるようになります。
しかし、根本的な問題は変わりません。製造会社が「もう売ってません」と報告しなければ、FDAはその薬が市場から消えたことを知りません。そして、価格の透明性は、依然として低いままです。
今後は、FDAのリスト+卸売業者の在庫データ+薬価情報の3つを組み合わせて使うのが、最善の方法です。一つの情報源に頼ると、間違いを起こします。
まとめ:このリストをどう使うべきか
認可ジェネリックのFDAリストは、次のような人に役立ちます:
- 薬の市場動向を分析する企業の担当者
- ジェネリックメーカーが、競合の動きを調べるとき
- 研究者が、薬の価格変動の背景を調べるとき
でも、次のような人にはあまり役立ちません:
- 「今、安い薬を探している」患者
- 「薬局でこの薬はある?」と聞く薬剤師
- 「保険適用で安く済ませたい」人
このリストは、「薬の歴史」を知るためのものであって、「買い物のガイド」ではありません。もし、あなたが「安い薬を探している」なら、このリストを見ても、実際の価格や在庫はわかりません。薬局に直接聞いて、NDCコードで確認するのが、唯一の確実な方法です。
認可ジェネリックは、医療の世界では重要な存在です。でも、その価値は、市場の裏側に隠されています。表面の情報だけを信じず、実際の市場と照らし合わせる。それが、正しい使い方です。
認可ジェネリックは、普通のジェネリックより安いですか?
一般的には、普通のジェネリックより安いとは限りません。認可ジェネリックはブランド薬の製造会社が作っているので、価格を下げすぎると、自社のブランド薬の売上が減るため、価格をあまり下げません。普通のジェネリックは、複数のメーカーが競い合うので、価格が大幅に下がります。実際、認可ジェネリックはブランド薬の10~20%安程度ですが、普通のジェネリックは70%以上安になることもあります。
FDAのリストで見つけた薬が、薬局にないのはなぜですか?
FDAのリストは、薬が「市場に出たことがある」ことを記録するだけです。薬が「今も売られている」かどうかは、記録されません。製造会社が「販売を中止しました」とFDAに報告しない限り、リストにはずっと「販売中」と表示されます。実際には、在庫がなく、卸売業者にも仕入れていない可能性が高いです。
認可ジェネリックとオレンジブックの違いは何ですか?
オレンジブックは、通常のジェネリック(ANDAで承認された薬)の「治療的に同等」という評価を載せています。認可ジェネリックは、NDAで承認されているため、オレンジブックには載っていません。認可ジェネリックは、ブランド薬と同じ製造元で、ラベルだけを変えたものなので、治療的同等性は自動的に保証されていますが、公式な評価はされません。
認可ジェネリックは、保険で適用されますか?
はい、多くの保険では認可ジェネリックも適用されます。ただし、保険会社は「通常のジェネリック」を優先するように設計されていることが多く、認可ジェネリックは「ブランド薬」に近い価格扱いになることがあります。保険の適用範囲は、保険プランによって異なるので、薬局や保険会社に確認してください。
認可ジェネリックを自分で見つけるにはどうすればいいですか?
まず、FDAの認可ジェネリックリストで、使いたい薬の名前を検索します。次に、その薬のNDCコードをメモします。その後、薬局や卸売業者のカタログで、そのNDCコードが現在在庫があるか、価格はいくらかを確認します。リストだけでは不十分で、実際の市場データと照らし合わせることが必須です。