骨折予防に効果的なカルシウム、ビタミンD、骨形成薬の正しい使い方

骨折予防に効果的なカルシウム、ビタミンD、骨形成薬の正しい使い方

高齢になってから骨折するリスクは、単なる転倒とは違う問題です。一度髋関節や背骨の骨折を起こすと、生活の質は急激に下がり、介護が必要になるケースも少なくありません。日本では、65歳以上の女性の3人に1人が骨粗しょう症を抱えており、その多くが「いつか骨折するかもしれない」と不安を抱えています。でも、カルシウムとビタミンDを飲めば大丈夫、という思い込みは、実は危険です。

カルシウムとビタミンDだけでは骨折は防げない

多くの人が、骨折予防には「カルシウムとビタミンDを毎日飲めばいい」と思っています。でも、最新の研究では、この組み合わせが効果を発揮するのは、特定の条件を満たす人だけです。2019年にJAMA Network Openで発表された11件のランダム化試験をまとめたメタアナリシスでは、ビタミンD単独では骨折のリスクを減らさないことがはっきり示されました。髋関節骨折のリスクは、むしろ19%上昇する傾向さえ見られました。

では、カルシウムとビタミンDを一緒にとれば? それも、剂量と対象が重要です。1日あたり800〜1,000 IUのビタミンD3と1,000〜1,200mgのカルシウムを継続的に摂取した場合、全体の骨折リスクは6%、髋関節骨折は16%減るというデータがあります。しかし、これはビタミンDが不足している人食事からカルシウムが十分に取れていない人介護施設にいる高齢者に限られます。

アメリカの女性健康イニシアチブ(WHI)という大規模な研究では、1日400IUのビタミンDと1,000mgのカルシウムを5年間飲んだグループで、骨折の減少は統計的に意味がありませんでした。つまり、低用量では全く効果がないのです。さらに、カルシウムの過剰摂取は腎臓結石のリスクを17%上げ、心臓病のリスクもわずかに増加する可能性があります。FDAは2021年、1日1,000mgを超えるカルシウム補助剤の使用に注意を呼びかけています。

骨形成薬は「補助」ではなく「治療」

カルシウムとビタミンDは、骨を丈夫にする「材料」です。でも、骨がもろくなる原因は、骨の破壊が作り出されるスピードより、骨をつくるスピードが遅くなっていることです。ここにこそ、骨形成薬の出番があります。

代表的な薬は、ビスフォスフォネート(アレンドロン酸、ゾレドロン酸)、デノスマブ、テリパラチド、ロモソズマブです。これらの薬は、骨の再吸収を抑えるか、新しい骨をつくる力を高めます。特に、アレンドロン酸は、脊椎の骨折リスクを44%、ゾレドロン酸は髋関節骨折を41%減らすことが臨床試験で証明されています。

2021年のマヨクリニックの研究では、ビタミンDを30ng/mL以上に回復させた上でアレンドロン酸を服用した127人の高齢者で、骨折の発生が58%も減りました。これは、栄養補助と薬物治療の組み合わせが、単独では決して達成できない効果を生む証拠です。

誰が骨形成薬を受けるべきか?

すべての高齢者が骨形成薬を飲む必要はありません。治療の対象は、骨折リスクが高い人に限られます。その判断に使われるツールが、FRAX®(フラックス)です。これは、年齢、性別、体重、既往歴、喫煙状況、ステロイド使用歴などを入力すると、10年間の骨折確率を算出してくれるツールです。

アメリカでは、主要な骨粗しょう症関連骨折のリスクが20%以上なら薬物治療を勧めます。日本では、この基準が15%以上とやや低めに設定されています。また、過去に脊椎や髋関節の骨折を経験した人は、自動的に治療対象になります。一度骨折した人のうち、2年以内にもう一度骨折する確率は20%以上です。これは、がんの再発よりも高いリスクです。

カルシウムサプリが砂漠にこぼれ、唯一の緑の芽が骨形成薬を象徴している。

骨形成薬の副作用と注意点

薬には副作用があります。ビスフォスフォネートは、胃の不快感を起こしやすく、服用後に横にならずに30分以上立っていなければいけません。この面倒さから、1年以内に半数以上が服薬をやめてしまうというデータもあります。

まれに、顎の骨が壊死する「骨壊死」や、太ももの骨に不自然な亀裂が入る「非典型大腿骨骨折」が起きることがあります。ただし、その発生率は0.1%以下。薬を服用している間は、歯科検診を必ず受ける必要があります。歯の治療が必要な場合は、薬を一時的に中断する場合があります。

デノスマブは注射で、6ヶ月ごとに1回受けます。効果は強いですが、止めると骨密度が急激に下がるため、継続が必須です。テリパラチドやロモソズマブは、骨をつくる力を直接高める「骨形成薬」で、1年間だけ使うのが基本です。その後、ビスフォスフォネートやデノスマブに切り替えて、効果を維持します。

ビタミンDは「検査してから」補う

ビタミンDは、単に「日光を浴びる」だけでは足りません。特に冬の日本では、紫外線が弱く、皮膚での合成量が極端に減ります。また、肥満や高齢では、ビタミンDの活性化がうまくいかないことも多いです。

重要なのは、血中の25-(OH)D濃度を測ることです。目標は30〜50ng/mLです。20ng/mL以下なら「欠乏」、20〜29ng/mLなら「不足」と診断されます。欠乏の場合は、週に5万IUのビタミンD2を8〜12週間、その後は1日800〜2,000IUを維持します。このとき、血中のカルシウム値も定期的にチェックする必要があります。補充しすぎると、高カルシウム血症になり、吐き気や意識障害を起こす可能性があります。

高齢男性の背骨が木になり、薬の根から骨密度検査の葉が生えている。

本当に必要なのは「継続」

骨粗しょう症の治療で一番難しいのは、継続することです。2022年の患者調査では、ビスフォスフォネートを飲んでいる人の68%が胃の不快感を訴え、22%が1年以内にやめています。サプリメントの場合は、3ヶ月で80%以上が飲み忘れます。

成功しているケースは、医師と患者が「なぜこの薬を飲むのか」をしっかり話しあったところです。例えば、「この薬を飲めば、来年の冬に骨折して寝たきりになる確率が60%減る」と具体的に伝えると、服薬率が上がります。また、薬の副作用が心配な場合は、代替薬の選択肢を一緒に探すことが大切です。

今、何をすべきか?

65歳以上で、過去に骨折したことがある人:すぐに医師に相談し、FRAX®でリスクを評価してください。薬物治療を検討すべきです。

65歳以上で、骨折歴がないが、母や祖母が骨折した人:血液検査でビタミンDの値を確認しましょう。不足していれば、800IUのビタミンDと1,000mgのカルシウムを継続して摂取してください。

65歳以下で、ステロイドを長期服用している人:骨密度検査(DEXA)を受けるべきです。骨粗しょう症は、高齢者だけの病気ではありません。

骨折予防は、サプリメントを飲むことではありません。正しい検査、適切な薬、継続する意思、そして生活習慣の改善--これらがすべて揃ってはじめて、効果が出ます。あなたの骨は、今日の選択で、5年後のあなたの生活を決めます。

カルシウムとビタミンDを毎日飲めば骨折は防げる?

いいえ、単に飲むだけでは防げません。ビタミンDが不足している人や、食事でカルシウムが十分に取れていない高齢者に限って、1日800〜1,000IUのビタミンD3と1,000〜1,200mgのカルシウムを組み合わせた場合に、わずかに効果があります。低用量(400IU以下)では効果がなく、むしろ副作用のリスクだけが高まります。

骨形成薬は怖いと聞きますが、本当に安全ですか?

副作用はありますが、骨折のリスクと比べると圧倒的に小さいです。骨壊死や非典型大腿骨骨折は、1万人に1人以下という非常にまれな事例です。一方、一度髋関節骨折を起こすと、1年以内に20%以上が死亡します。薬のリスクより、骨折のリスクの方がはるかに高いのです。医師と相談し、適切な薬を正しく使うことが重要です。

ビタミンDは日光浴で十分ですか?

冬の日本では、日光浴だけでは十分なビタミンDを作れません。皮膚で合成される量は、季節や地域、肌の色、年齢によって大きく変わります。特に高齢者では、皮膚の合成能力が低下しているため、サプリメントによる補充が必要な人がほとんどです。血中の濃度を測ってから、必要量を決めるのが正しい方法です。

骨密度検査はどのくらいの頻度で受ければいい?

初回の検査は65歳以上で受けるのが推奨されます。骨粗しょう症と診断され、薬を飲み始めた場合は、1〜2年後に再検査します。薬の効果が確認できれば、その後は2〜3年ごとに検査すれば十分です。検査はDEXA(二重X線吸収法)で行います。痛みもなく、放射線量はレントゲンの1/10以下です。

骨形成薬をやめたら、また骨はもろくなる?

はい、特にデノスマブやビスフォスフォネートは、薬をやめると骨の破壊が再開し、骨密度が急激に下がる可能性があります。特にデノスマブは、1回の注射の効果が6ヶ月なので、予定通りに注射を受けないと、数ヶ月で骨が弱くなります。薬をやめる場合は、必ず次の治療法(例えばビスフォスフォネート)を準備してからやめる必要があります。

長谷川寛

著者について

長谷川寛

私は製薬業界で働いており、日々の研究や新薬の開発に携わっています。薬や疾患、サプリメントについて調べるのが好きで、その知識を記事として発信しています。健康を支える視点で、みなさんに役立つ情報を届けることを心がけています。

コメント (13)

  1. kazunori nakajima

    kazunori nakajima - 28 12月 2025

    カルシウムとビタミンDだけじゃダメって、本当によくわかる!俺も毎日飲んでたけど、全然効いてない気がした😅

  2. Daisuke Suga

    Daisuke Suga - 29 12月 2025

    ああ、これね。カルシウムサプリを飲んでる高齢者って、まるで魔法の薬を飲んでるみたいに思ってるんだよ。でも現実は、骨は「材料」じゃなくて「工場」なんだよ。骨形成薬は、骨の建設会社。カルシウムはレンガ。ビタミンDはセメント。でも、建設会社がいないと、レンガとセメントはただの山だよ。工場が動かないと、いくら材料を積んでも、家は建たない。だから、アレンドロン酸やゾレドロン酸は、骨の「工場長」みたいなもん。この工場長がいないと、骨は腐ってくだけ。そして、その工場長の給料は、ビタミンDの血中濃度で決まる。30ng/mL以上じゃないと、工場長は寝てるんだよ。だから、検査しないでサプリ飲んでる人は、工場長に給料を払ってないのと同じ。悲劇だよ、悲劇。

  3. 門間 優太

    門間 優太 - 30 12月 2025

    確かに、サプリだけでは不安だよね。でも薬の副作用も心配だし、何を信じればいいのか、迷うところだな。

  4. 利音 西村

    利音 西村 - 31 12月 2025

    あー、だから私はいつも『骨のことを考えると、もう寝たくない』ってなるのよ!!!カルシウム!ビタミンD!薬!検査!注射!歯医者!骨壊死!非典型大腿骨骨折!!!もう、全部、全部、怖すぎる!!!

  5. TAKAKO MINETOMA

    TAKAKO MINETOMA - 2 1月 2026

    この記事、めっちゃ大事。特に『ビタミンDは日光で足りる』って思い込みが、日本では深刻すぎる。私も去年、25(OH)Dが18ng/mLで、医者に『あなたは欠乏症です』って言われて、びっくりした。日光浴してたつもりだったのに…。高齢者って、屋内にいる時間長すぎ。しかも、肌の合成能力は20歳の半分以下。だから、サプリは『選択』じゃなくて『必須』。でも、過剰摂取も危険。だから、検査して、医者と相談して、ちゃんと計画的に補うのが正解。この記事、医療従事者にも読んでもらいたい。

  6. kazunari kayahara

    kazunari kayahara - 4 1月 2026

    骨形成薬の副作用、0.1%以下って書いてあるけど、0.1%って1万人に1人。日本で1億人いて、高齢者3000万人なら、3万人が副作用で苦しむ可能性あるよ?リスクは低いけど、ゼロじゃない。だから、『薬のリスクより骨折のリスクの方が高い』って言い方、ちょっと乱暴じゃない?リスクの比較は、ちゃんと数値で示すべきだよ。

  7. 優也 坂本

    優也 坂本 - 4 1月 2026

    ハッハッハ!カルシウムサプリの市場って、医療業界の巨大な詐欺だよ。製薬会社が『骨粗しょう症』という病気を創り出して、お年寄りから金を巻き上げてる。ビタミンDは日光で足りるって言ったら、『それは科学的根拠が…』って言われるけど、本当は、サプリの売上が落ちるから、医者は嘘をつくんだよ。FRAX?あれは製薬会社が作ったツールだ。骨密度検査?DEXA?放射線?そんなの、もっと安い方法あるのに。この記事、全部、製薬会社の宣伝だよ。お前ら、気づいてる?

  8. JUNKO SURUGA

    JUNKO SURUGA - 5 1月 2026

    私も祖母が骨折して、介護が必要になったから、この記事、すごく胸に響きました。薬の話より、『継続する』ってところが一番難しいって、本当にその通り。毎日飲むの、忘れるし、面倒だし…。でも、『来年の冬、寝たきりにならないため』って、自分に言い聞かせて、今も頑張ってます。薬、ちゃんと飲んでます。

  9. Ryota Yamakami

    Ryota Yamakami - 6 1月 2026

    この記事、すごく丁寧で、優しいな。薬の話って、怖くて避けがちだけど、ここではちゃんとリスクとメリットが両方書かれてる。副作用の話も、『0.1%以下』って数字で示して、ちゃんと『でも、骨折のリスクはそれより高い』って結論つけてる。これ、患者に伝えるのに最適な文章だよ。医療の現場で、こういう説明ができたら、患者も納得して薬を飲めると思う。

  10. yuki y

    yuki y - 7 1月 2026

    カルシウムとビタミンDは毎日飲んでるけど骨折したって聞いたからちょっと不安…でも薬は怖いからまだ飲んでない…でもでも…

  11. Hideki Kamiya

    Hideki Kamiya - 8 1月 2026

    いやいや、これ全部、政府と製薬会社の陰謀だよ!ビタミンDは日光で足りるって、昔の人は知ってた!でも、サプリで儲けるために、『日光不足』って嘘を広めたんだ!FRAXって、実はAIが骨密度を操作してるんだよ!デノスマブの注射、実は月に1回でいいのに、6ヶ月って嘘ついてる!お前ら、ネットの情報、信じすぎだぞ!

  12. Keiko Suzuki

    Keiko Suzuki - 9 1月 2026

    この記事は、骨粗しょう症の正しい理解と、適切な治療のあり方を、丁寧かつ正確に示しています。特に、カルシウムとビタミンDの適応範囲と、骨形成薬の適切な使用時期についての記述は、臨床現場で非常に参考になります。継続の重要性と、患者とのコミュニケーションの在り方についても、深く共感します。このような情報発信が広まることを願っています。

  13. 花田 一樹

    花田 一樹 - 10 1月 2026

    ああ、そうか。だから俺、毎日サプリ飲んでたけど、全然効いてなかったんだね。うん。分かった。じゃあ、今から検査しに行くか。

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