高齢になるほど、たくさんの薬を飲むようになります。関節炎の薬、血圧の薬、胃の薬、ビタミン、サプリメント……。でも、その中には、もう必要なくなっている薬が意外と多いんです。実は、薬を減らすことで、健康を守りながら、年間で数千円から数万円も医療費を節約できるんです。このプロセスを減薬(げんやく)といいます。減薬は、薬をやめるのではなく、安全に、正しいタイミングで、必要な薬だけを残すことです。医師としっかり話せば、誰でも始められます。
なぜ減薬が必要なのか?
65歳以上の日本人の約4割が、5種類以上の薬を同時に飲んでいます。これを「多剤併用」と言います。薬が多いと、副作用のリスクが高まります。めまい、ふらつき、記憶力の低下、転倒、胃の不快感……。これらの症状の原因が、実は「薬」であることが多いのです。
さらに、薬の費用も重い負担です。2023年のデータでは、年金生活者の収入の18.3%が薬代に使われています。たとえば、月に120円の睡眠薬、75円のハーブサプリメント、50円のビタミンDを、必要ないのに飲み続けていると、年間で2,000円以上も無駄になります。そして、薬の副作用で病院に行けば、入院費は平均で15万円以上になります。減薬は、薬を減らすことで、副作用を減らし、医療費を節約する、一石二鳥の方法です。
減薬の成功例:実際に節約できた人の話
大阪の72歳の女性は、医師と相談して3つの薬をやめました。一つは、心臓の薬と重複していたサプリメント。もう一つは、血圧が安定してから必要なくなった薬。最後は、睡眠薬。これらをやめた結果、年間840円の節約になりました。彼女は「薬を減らしたら、むしろ体が軽くなった」と言います。
神戸で暮らす68歳の男性は、薬局の薬剤師と相談して、月90円のビタミンDサプリメントをやめました。血液検査で「ビタミンDは十分ある」と分かったからです。彼は「薬剤師が『この薬、もういらないよ』って言ってくれて、びっくりした」と話します。
一方で、自分で薬をやめようとすると危険です。ある患者さんは、高血圧の薬を勝手にやめたところ、血圧が急上昇し、救急搬送されました。治療費は12万円になりました。減薬は、医師の指導なしには絶対にやってはいけません。
減薬を始めるための5つのステップ
- すべての薬をリストアップする:処方薬、市販薬、サプリメント、漢方薬、甚至外用薬(貼り薬、点眼薬)まで。薬瓶をすべて持って行きましょう。薬局で無料で薬のリストを作ってくれるところもあります。
- 薬の目的を確認する:「この薬は、何のために飲んでいるの?」と医師に聞きます。答えが「以前から飲んでたから」や「他の医者が出したから」なら、疑っていいです。
- 副作用のリスクを知る:薬の副作用で、転倒や認知症のリスクが高まることがあります。特に、眠気を起こす薬、利尿剤、抗コリン薬は注意が必要です。
- やめる薬を1つずつ決める:一度に複数の薬をやめると、何が原因で体調が変わったか分かりません。まずは、1つだけやめることから始めます。
- やめた後の様子を観察する:薬をやめた後、1~2週間は体の変化に注意します。めまい、不眠、不安、血圧の変動などがあれば、すぐに医師に連絡します。
医師にどう話せばいい?
「減薬したい」と言うと、医師は「薬をやめたら悪化するのでは?」と心配します。だから、聞き方を工夫しましょう。
- 「この薬は、今でも必要ですか?」「効果はまだありますか?」
- 「この薬で、転倒や記憶力の低下のリスクはありますか?」
- 「もしやめたら、どうなるでしょうか?」「やめられるなら、どのくらいの期間でやめればいいですか?」
- 「他の薬と重複していませんか?」「同じ効果の安価な薬はありますか?」
医師は、薬の効果とリスクを「薬の適正性評価」(MAI)というツールでチェックします。1つの薬につき、約7分で評価できます。薬の数が多ければ、複数回に分けて相談するのがベストです。
薬剤師の力も借りよう
薬局の薬剤師は、減薬のプロです。日本では、薬局で「薬剤師による薬の見直しサービス」が無料で受けられます(医療保険適用)。薬剤師は、処方内容を確認し、重複や副作用のリスク、コストの無駄を指摘してくれます。
たとえば、2つの薬が同じ効果を持っていて、片方だけでも十分な場合、薬剤師は「この薬はやめて、もう一つで十分です」と提案できます。また、ジェネリック薬に変えることで、月1,000円以上節約できるケースもよくあります。
薬剤師は、医師の補助役ではなく、減薬の「パートナー」です。薬局に通うたびに、「この薬、今でも必要?」と聞く習慣をつけましょう。
減薬で節約できる金額の実例
以下は、実際に減薬で節約できた金額の例です。
| 薬の種類 | 月額費用 | 年間節約額 | 節約の理由 |
|---|---|---|---|
| プロトンポンプ阻害薬(胃薬) | ¥4,000 | ¥48,000 | 胃の症状が改善したため、継続不要 |
| ビタミンDサプリメント | ¥750 | ¥9,000 | 血液検査で正常値を確認 |
| 睡眠薬 | ¥10,000 | ¥120,000 | 生活習慣改善で効果なし |
| 抗コリン薬(尿意抑制) | ¥6,500 | ¥78,000 | 転倒リスクが高すぎる |
| 重複する降圧薬 | ¥8,000 | ¥96,000 | 1種類で十分だった |
これらの薬を1つ減らすだけで、年間数万円の節約になります。薬が多ければ多いほど、節約の可能性は高くなります。
減薬を成功させるコツ
- 1つずつやめる:複数の薬を同時にやめると、体の変化がわからなくなります。
- やめるのはゆっくり:血圧薬や抗うつ薬は、急にやめるとリバウンドが起こります。数週間かけて徐々に減らします。
- 記録をつける:薬をやめた後の体調、睡眠、気分、血圧などをノートに書くと、医師と話しやすくなります。
- 定期的に見直す:薬の必要性は、年齢や体調で変わります。年に1回は、薬の見直しを医師と話しましょう。
- 薬局と連携:薬剤師に薬のリストを渡して、チェックしてもらいましょう。
減薬は、医療費削減の最強の手段
減薬は、薬をやめるのではなく、無駄な薬を減らして、本当に必要な薬だけを残すことです。医師と薬剤師、そしてあなた自身が協力すれば、健康を守りながら、年間数十万円もの医療費を節約できます。
日本では、2024年から医療保険制度が変わり、薬の安全性を重視する方向に進んでいます。今後は、減薬が当たり前の医療の一部になります。あなたが今、飲んでいる薬のうち、どれが本当に必要か? 次に病院に行くとき、薬瓶を持っていって、医師に聞いてみてください。小さな一歩が、大きな節約と、健康な毎日を生みます。
減薬は誰でもできるのですか?
はい、誰でもできますが、必ず医師の指導のもとで行う必要があります。特に高齢者や、複数の病気を持っている人ほど、減薬の効果が大きいです。ただし、がんの治療中や心不全、重度の糖尿病など、薬をやめると命に関わる状態の場合は、医師と慎重に判断します。
減薬すると、病気が悪化するリスクはありませんか?
やめる薬が不適切なものであれば、むしろ健康が改善します。たとえば、胃薬を長く飲み続けていると、腸内細菌が乱れて肺炎のリスクが高まります。しかし、血圧薬や抗うつ薬を急にやめると、リバウンドで血圧が急上昇したり、不安が強くなったりする可能性があります。だから、減薬は「ゆっくり」「1つずつ」「医師と相談して」行う必要があります。
減薬にかかる費用はありますか?
減薬そのものに費用はかかりません。医師の診察や薬剤師の相談は、保険適用なので、通常の診察料(3割負担)で済みます。薬局の薬剤師による薬の見直しサービスは、完全に無料です。むしろ、薬を減らすことで、薬代が安くなり、病院に行く回数も減るので、結果的に医療費は大幅に削減されます。
減薬の対象になる薬はどんなものですか?
特に減薬の対象になるのは、以下の薬です:
・長く飲み続けている胃薬(プロトンポンプ阻害薬)
・睡眠薬や抗不安薬(長期間使用で効果が薄れる)
・ビタミンやサプリメント(血液検査で必要ないと分かったもの)
・重複する薬(同じ効果の薬を2種類飲んでいる)
・副作用リスクが高い薬(転倒や認知機能低下を起こす薬)
これらの薬は、日本医師会や厚生労働省のガイドラインでも、減薬の優先対象として挙げられています。
減薬のための準備として、何を持って病院に行けばいいですか?
すべての薬の瓶を、そのまま持って行ってください。処方薬、市販薬、漢方薬、サプリメント、貼り薬、点眼薬など、すべてです。薬の名前、用量、服用回数、いつから飲み始めたか、なぜ飲み始めたかを書き出しておくと、より効果的に話せます。薬局で無料で薬のリストを作ってくれるので、それを持っていくのもおすすめです。