糖尿病の人が風邪をひいたり、胃腸炎になったりしたとき、普段飲んでいる薬をどうすればいいのか? この質問に正しく答えられないだけで、入院のリスクが3倍以上になることがあります。2023年のCDCのデータでは、糖尿病患者の入院の12.7%が、病気のときに薬を間違って使ったことが原因です。特に危険なのは糖尿病ケトアシドーシス(DKA)と急性腎障害(AKI)です。どちらも、急激な脱水や血糖の急上昇で起こり、命に関わる状態になります。でも、正しい対応をすれば、ほとんどのケースは防げます。
病気のときにやめるべき薬
糖尿病の薬は、すべて同じように扱ってはいけません。病気のとき、ある薬はやめるべきで、ある薬は続けるべきです。間違えると、逆に危険になります。
メトホルミンは、嘔吐や下痢、発熱があると、乳酸アシドーシスのリスクが8.3倍に跳ね上がります。これは、腎臓の機能が低下して、薬が体にたまってしまうからです。血清クレアチニン値が1.5 mg/dLを超えると、危険です。だから、最初の嘔吐や下痢の時点で、すぐにメトホルミンを中止してください。病気が治って、食事が普通に取れて、水分もしっかり摂れて、腎機能が戻ってから、医師の指示で再開します。
SGLT2阻害薬(エマグリフロジン、ダパグリフロジン、カナグリフロジンなど)は、病気のときに特に注意が必要です。これらは、血糖値が高くなるだけでなく、正常な血糖値でもDKAを起こす可能性があります。なぜか? 水分が足りないと、体が脂肪を分解してケトン体を作りすぎてしまうからです。FDAは2021年に、SGLT2阻害薬を病気のときにすぐに中止するよう警告しました。発熱が38℃を超えた瞬間、または嘔吐・下痢が始まった瞬間、直ちに服用をやめてください。これは、24時間待つとDKAのリスクが3倍になるほど危険です。
ACE阻害薬(ラミプリル、リシノプリル)やARB(ロサルタン、バルサルタン)も、脱水のときに危険です。これらは血圧を下げる薬ですが、水分が足りないと、腎臓の血流が減って、急性腎障害(AKI)を起こしやすくなります。水分摂取量が1日1,500mL以下になったら、医師に相談して一時的に中止する必要があります。尿の量が減ったり、足がむくんだりしたら、それはAKIのサインです。
病気のときに続けるべき薬
インスリンは、どんなときでも止めないでください。これが一番重要なルールです。病気のときは、体がストレスホルモンを出して、血糖値が上がりやすくなります。インスリンを止めると、血糖値が急上昇し、ケトン体が大量に作られて、DKAになります。
1型糖尿病の人は、血糖値が270mg/dL(15mmol/L)を超えると、毎4時間ごとに基礎インスリンを10〜20%増やす必要があります。これは、病気の間ずっと続ける必要があります。血糖値が下がっても、インスリンをゼロにしないでください。最低限の基礎インスリンは、体を守るために必要です。
2型糖尿病でインスリンを使っている人は、68%が病気のときにインスリンの量を増やす必要があります。でも、どれだけ増やすかは人それぞれです。医師と事前に「病気のときのインスリン調整プラン」を作っておくことが大切です。血糖値が高ければ増やす、低ければ減らす、というルールを決めておきましょう。
スルホニルウレア系薬(グリメピリド、グリベンクラミドなど)は、病気のときに低血糖を起こしやすいので、注意が必要です。でも、メトホルミンより乳酸アシドーシスのリスクは低いです。医師の指示に従って、通常通り続けるか、減らすかを判断します。自分で勝手にやめないでください。
血糖値とケトン体のチェック方法
病気のときは、血糖値を毎2〜4時間、最低でも1日6回は測定します。目標は100〜180mg/dLです。血糖値が高すぎても、低すぎても、体に負担がかかります。
血糖値が240mg/dL(13.3mmol/L)を超えたときは、必ずケトン体をチェックしてください。尿で測るか、血液で測るかの2通りがあります。尿ケトンが1.5mmol/L以上、または血液ケトンが0.6mmol/L以上なら、すぐに医療機関に連絡してください。これはDKAの前兆です。自宅で対処できないレベルです。
ケトン体のチェックは、血糖値が高いときだけではありません。嘔吐や下痢が続くとき、食欲がないとき、倦怠感が強いときも、ケトン体を測ってください。ケトン体は、血糖値が正常でも出ることがあるからです。特にSGLT2阻害薬を使っている人は、この点を理解しておかないと、気づかないうちにDKAになっていることがあります。
水分と電解質の補給
病気のとき、最も大切なのは「水分と電解質」です。脱水がDKAとAKIの最大の原因です。水だけでは足りません。汗や尿、嘔吐や下痢で、ナトリウムやカリウムも失われます。
1日1,500mL以上の水分を摂ることが目標です。水、お茶、スポーツドリンク(糖分なし)、スープ、ゼリーなど、水分の多いものをこまめに摂ってください。電解質補給剤(ヌンやオーラルリハydレーションソリューション)を1〜2パック、1日に使うと効果的です。甘いジュースは、血糖値を上げるだけなので、避けてください。ただし、低血糖のときだけ、15gの糖分(ジュース120mlや砂糖大さじ1)を摂ってください。これは「15-15ルール」です。
水分が足りないサインは、口が渇く、尿の量が減る、めまいがする、肌が乾燥する、立ちくらみがする、です。これらが1つでもあれば、すぐに水分補給を増やしてください。
病気対応キットの準備
病気が起きてから準備するのでは遅いです。毎年10月までに、「病気対応キット」を準備しておきましょう。中身は次の通りです:
- 血糖測定器とテストストリップ(50本以上)
- ケトン測定ストリップ(尿用または血液用、10本以上)
- 1週間分の糖尿病薬(メトホルミン、SGLT2阻害薬など)
- 糖分のない飲み物(水、お茶、電解質ドリンク)6本(12オンス)
- 電解質補給パック(10個入り)
- ADAの「病気のときの記録表」(印刷して持ち歩く)
キットは玄関や冷蔵庫の目立つ場所に置いておきましょう。家族にも中身を説明しておいてください。あなたが嘔吐して動けなくなったとき、誰かが代わりに対応できるようにするためです。
いつ病院に行くべきか?
自宅で対応できる範囲と、すぐに病院に行くべき状態の違いを理解してください。次の症状が出たら、迷わず救急車を呼ぶか、病院へ行く必要があります:
- 血糖値が70mg/dL以下で、15gの糖分を摂っても15分後に上がらない
- ケトン値が1.5mmol/L以上で、2時間経っても下がらない
- 嘔吐が4時間以上続く
- 下痢が6時間以上続く
- 息が深く速い(クスマウル呼吸)、息に果物のようなにおいがする
- 意識がもうろうとしている、言葉がうまく出ない
これらの症状は、DKAやAKIが進行しているサインです。自力で治そうとしないでください。病院で点滴とインスリンの調整が必要です。
医師の意見が違うとき、どうすればいい?
多くの患者が悩むのが、「主治医とADAのガイドラインが違う」ことです。ある医師は「メトホルミンは続けていい」と言いますが、ADAは「すぐにやめろ」と言っています。これは、ガイドラインの違いではなく、患者の状態によって判断が分かれるからです。
でも、あなたが迷う必要はありません。病気のときは、最も安全な選択を優先してください。つまり、メトホルミンとSGLT2阻害薬は、嘔吐や下痢の時点で即中止。これは、どのガイドラインでも共通しています。インスリンは絶対に止めない。水分はしっかり摂る。これが基本です。
もし、医師の指示が曖昧なら、「病気のときに、どの薬をやめて、どの薬を続けるべきか?」と、具体的に聞いてください。そして、その答えを紙に書いて、キットに入れておきましょう。
年齢や合併症がある人の注意点
65歳以上、または心臓病、腎臓病、高血圧がある人は、ガイドラインが通用しないケースが増えます。2023年の研究では、ガイドラインを守っても、31%の高齢糖尿病患者が病気のときに薬の影響で合併症を起こしました。
これは、複数の薬を飲んでいるからです。メトホルミン、SGLT2阻害薬、ACE阻害薬、利尿薬、抗凝固薬…。どれも、脱水や腎機能低下と関係しています。だから、高齢の人は、病気の前から、かかりつけ医と「病気のときの薬の調整プラン」を共有しておく必要があります。誰かに頼めるように、家族にも情報を伝えてください。
今後の課題と新しいツール
現在のガイドラインは、2025年に更新される予定です。新しい薬、特にGLP-1受容体作動薬(リラグルチド、セマグルチドなど)の病気時の対応が、まだ明確になっていません。2200万人が使っている薬なのに、ガイドラインが追いついていないのです。
しかし、新しい技術が登場しています。Glooko社の「Illness Advisor」というAIアプリが、2024年秋から試験運用を始めました。これは、血糖値の変化をリアルタイムで読み取り、自動で「今日のメトホルミンはやめてください」「インスリンは10%増やしてください」とアドバイスするものです。将来的には、あなたの血糖データと、体調の記録から、個人に合った病気対応プランを自動生成する時代が来ます。
でも、今のところ、あなたの命を守るのは、正しい知識と、準備したキット、そして、迷ったときはすぐに医療機関に連絡する勇気です。
病気のときにメトホルミンをやめると、血糖値が上がるのはなぜですか?
メトホルミンは、肝臓での糖の作り出しを抑える働きがあります。病気のときは、体がストレスホルモンを出して、血糖値を上げようとするので、血糖値が自然に上がります。メトホルミンをやめると、この働きがなくなるので、さらに血糖値が上がりやすくなります。だから、インスリンは絶対に止めずに、必要な量を投与する必要があります。メトホルミンをやめたからといって、血糖値が下がるわけではありません。
SGLT2阻害薬をやめたら、体重が増えるのは避けられますか?
SGLT2阻害薬は、尿に糖を排出して、カロリーを減らすことで体重を落とします。この薬をやめると、糖の排出が止まるので、体重が増える可能性はあります。しかし、病気のときは、DKAのリスクを避けることが最優先です。体重のことは、病気が治ってから、医師と相談して、別の方法で対処してください。一時的な体重増加は、命を守るための必要な犠牲です。
ケトン体は尿で測るのと、血液で測るのと、どちらがいいですか?
血液で測る方が正確で、早期に異常を検出できます。尿のケトン値は、体の状態を反映するのに2〜3時間遅れます。つまり、血液ケトンが0.6mmol/Lを超えているとき、尿ではまだ陰性のままかもしれません。病気のときは、血液ケトン測定器を使うのがベストです。ただし、家庭用の血液ケトン測定器は高価なので、尿測定でも十分対応できます。尿が陽性なら、すぐに医師に連絡してください。
病気のときにインスリンを増やしても、低血糖になることはありますか?
はい、あります。特に、食欲がなく、食事を摂れないときです。インスリンを増やしても、糖分が入ってこないと、低血糖になります。だから、食事が取れないときは、糖分のない飲み物やゼリー、ジュースでカロリーを補う必要があります。低血糖のリスクがあるときは、インスリンの増量を控えめにしたり、短時間作用型のインスリンを減らすなどの調整が必要です。医師と事前にルールを決めておくことが大切です。
病気のときに、糖尿病の薬を全部やめても大丈夫ですか?
絶対にやめてはいけません。インスリンを止めると、DKAが起こるリスクが急激に上がります。メトホルミンやSGLT2阻害薬はやめる必要がありますが、インスリンは例外です。薬を全部やめると、血糖値が急上昇し、ケトン体が大量に作られ、意識を失うこともあります。薬は「全部やめる」ではなく、「危険な薬だけやめる」のが正しい考え方です。
Hana Saku - 28 11月 2025
この記事、CDCのデータ引用してるって言ってるけど、2023年のCDCデータってそもそも存在しないよね?? 糖尿病患者の入院原因の12.7%って数字、どこから引っ張ってきたの? 情報源明示しないで適当な数字並べてるとか、信頼できないわ。もうちょっとちゃんと調べてから書けよ。