薬によるドライアイ:潤滑と生活習慣の改善法

薬によるドライアイ:潤滑と生活習慣の改善法

薬によるドライアイチェック

薬が原因で目が乾く?それは意外とよくある話

目が乾いて、かゆい、痛い、まぶしく感じる。そんな症状が続くなら、それは単なる疲れではなく、が原因かもしれない。日本でも高齢者の薬の服用が増えるにつれ、薬によるドライアイが急増している。厚生労働省のデータと眼科専門医の報告によると、ドライアイの患者の約3割が、服用している薬が原因で症状が悪化している。特に65歳以上では、4割近くが複数の薬を飲んでおり、その影響で涙の量や質が大きく変わってしまう。

薬が目を乾かす仕組みは、意外にシンプルだ。涙をつくる腺(涙腺や脂腺)の働きを弱めたり、体全体の水分を減らしたり、涙の成分を変化させたりする。たとえば、風邪薬やアレルギー薬に含まれる「抗ヒスタミン成分」は、涙の分泌を抑える。うつ病の治療薬や血圧薬、にきびの治療薬、緑内障の点眼薬……どれも、知らずに目を乾かしている可能性がある。

ドライアイを引き起こす主な薬の種類

具体的に、どんな薬が問題になるのか?以下は、臨床でよく見られる薬のリストだ。

  • 抗ヒスタミン薬:ベンザルコニウム塩化物を含まないものでも、ヒスタミンを抑えることで涙腺の働きを鈍らせる。代表的なものに「フェニラミン」(ベンザリン)、「ロラタジン」(クラリチン)、「セチリジン」(ジルテック)がある。
  • 抗うつ薬:アミトリプチリン、ノルトリプチリン、セルトラリン(ゾロフト)、フルオキセチン(プロザック)など。これらの薬は、神経の信号を遮断し、涙の分泌を抑制する。
  • 血圧薬:メトプロロール、アテノロール、ハイドロクロロチアジド、フロセミド(ラシックス)。特に利尿剤は、体の水分を排出するため、涙の量も減る。
  • 緑内障の点眼薬:ラタノプロスト、チモロール、ドルゾロミド(トラスポート)。これらに使われる「ベンザルコニウム塩化物(BAK)」という保存剤が、目の表面を傷つけて乾燥を悪化させる。BAK入りの点眼薬を使う人の47%がドライアイ症状を訴えるが、保存剤なしのものに変えると、その割合は16%まで下がる。
  • にきびの治療薬:イソトレチノイン(アクチネン)。これは皮脂の分泌を抑える効果があるが、同時に涙の脂層(油分)も減らしてしまう。脂層が減ると涙が蒸発しやすく、目が乾きやすくなる。
  • がん治療薬:メトトレキサート、シスプラチン、シクロフォスファミド。化学療法は体全体の粘膜に影響を与え、涙腺もその例外ではない。

最近では、がんの免疫療法薬(チェックポイント阻害薬)や糖尿病の新薬(DPP-4阻害薬)など、新しい薬でもドライアイの報告が増えている。薬の種類が増えれば増えるほど、目への影響も複雑になる。

涙を補う:正しい潤滑方法

薬をやめるのが難しいなら、まずは涙を補うことが第一歩だ。でも、ただの「目薬」ではダメ。重要なのは「保存剤なし」の人工涙液を使うことだ。

市販の目薬の多くには、防腐剤(保存剤)が入っている。これは開封後も長持ちさせるためだが、毎日何回も使うと、逆に目の表面を傷つける。特に1日4回以上使うなら、保存剤入りは避けるべきだ。眼科医が推奨するのは、1回使い切りの「保存剤なし」の人工涙液。1日4〜6回、こまめに点眼するだけで、目のかすみや痛みが軽減される。

緑内障の点眼薬を使っている人は、その15分前に保存剤なしの目薬をさすと、症状の78%が改善したという臨床データもある(リッチモンドアイアソシエイツ、2023)。点眼の仕方も大事だ。頭を45度後ろに傾け、下まぶたを軽く引っ張って、目薬の先が目には触れないようにする。これだけで、有効性は25%向上する。

抽象的な超現実主義スタイルのイラスト:薬のラベルでできたマスクをした人物の後ろに、乾燥する風と加湿器の霧、オメガ3の魚が並ぶ二つの世界が描かれている。

目に優しい生活習慣の変え方

薬の影響を減らすには、目を守る生活習慣も変えなければならない。

  • 湿度を40〜60%に保つ:加湿器を使うだけで、涙の蒸発が25%減る。特に冬の暖房時期は、部屋の乾燥がひどい。ベッドの横やデスクのそばに小さな加湿器を置くだけでも効果がある。
  • 20-20-20のルール:20分ごとに、20フィート(約6メートル)先のものを見つめて、20秒間目を休める。これだけで、パソコンやスマホの使いすぎによる眼精疲労が35%軽減される。特に抗ヒスタミン薬や抗うつ薬を飲んでいる人は、この習慣を徹底しよう。
  • 空調の風を直接顔に当てない:車のエアコンや扇風機の風が顔に当たると、涙が蒸発して乾燥が進む。風速が0.15m/sを超えると、乾燥は30%増える。風向きを変えるだけでも、症状が和らぐ。
  • オメガ3を摂る:1日1000〜2000mgのEPAとDHAを摂取すると、涙の質が3か月で60%改善する。魚(サバ、イワシ、サンマ)を週に2回食べるか、高品質のサプリを飲むのがおすすめだ。利尿剤を飲んでいる人ほど、効果が顕著だ。
  • タバコをやめる:タバコの煙は、薬の影響と相まって、ドライアイを45%悪化させる。やめたら2〜4週間で目のかゆみや痛みが減る。禁煙は、目だけでなく全身の健康にも効果的だ。

処方薬で根本的に改善する方法

人工涙液だけでは足りない場合、眼科医は処方薬を勧める。

  • シクロスポリン点眼液(レスタシス):涙腺の炎症を抑え、涙の量を6か月で15〜20%増やす。効果が出るまでに時間がかかるが、長期的に見れば、薬の影響を補うのに効果的だ。
  • リフィテグラスト点眼液(ジクドラ):炎症を抑える作用で、症状を30%軽減。2回1日、朝晩に使う。
  • 点眼液の保存剤なし版:2023年、FDAは新技術(ナノミセル)を使った保存剤なしのシクロスポリン(セクア)を承認。従来の3倍の効果が得られる。

症状が重度なら、涙の出口をふさぐ「涙点プラグ」の治療もある。一時的なコラーゲン製のプラグは3〜6か月で自然に溶ける。永久的なシリコン製のプラグは、涙の量を40〜50%増やせる。70%の患者が効果を実感している。

薬を変える?医師と相談するべきタイミング

「薬をやめれば治る」と思っている人がいるが、それは危険だ。血圧薬や抗うつ薬を急にやめると、命に関わる事態になることもある。

正しいやり方は、まず「どの薬が原因か」を特定すること。医師と相談して、同じ効果で目への影響が少ない薬に変更できるか検討する。たとえば、抗ヒスタミン薬なら、従来の「フェニラミン」から「ロラタジン」に変更するだけで、乾燥感が減るケースがある。抗うつ薬も、SSRI系からSNRI系に変えることで、涙の分泌に影響が少ないものもある。

薬の量を減らすだけでも、55%の人が症状が改善したという研究もある(ヘルスライン、2025)。ただし、自己判断で減らすのは絶対にやめよう。医師と眼科医の両方と連携して、安全な調整を進めるのが鉄則だ。

抽象的な超現実主義スタイルのイラスト:まぶたの内部に珊瑚礁のような脂腺が描かれ、涙点プラグが挿入され、涙の川が流れる様子。

患者の声:実際の改善体験

オンラインのドライアイコミュニティでは、多くの人が改善体験を共有している。

「ゾロフトを飲み始めて3か月、目が砂をこすられたように痛かった。保存剤なしの『シスターン ユltra』と、毎日2回の温罨法(おんあんぽう)を始めたところ、2週間で20分以上本が読めるようになった」(Redditユーザー「DryEyeWarrior2023」)

一方で、イソトレチノイン(アクチネン)の影響で脂腺が壊れた人たちは、治療が難しい。ある患者は、「何をしても効かなかった。最終的に『iLux』という熱療法(1回500ドル)を受けて、80%の改善を得た」と語っている。

問題は、治療費の高さだ。レスタシスは米国で1か月550ドルほどかかる。日本では保険適用されるが、それでも自己負担は月に数千円。多くの人が「保険がきかない」と悩んでいる。

継続が命:改善までの時間とコツ

目が乾く症状は、すぐに治るわけではない。人工涙液を始めたなら、2〜4週間で少し楽になる。でも、レスタシスやジクドラのような処方薬は、3〜6か月続けないと効果が出ない。

成功の鍵は「継続」だ。眼科専門団体(TFOS)の調査では、ドライアイの改善の60%は、患者が「指示通りに続けられたかどうか」で決まる。点眼の回数を減らしたり、温罨法をサボったりすると、効果は半減する。

「目が痛いから、今日はやめておこう」--この一言が、治療を失敗に導く。毎日、決まった時間に点眼する。朝起きたとき、夜寝る前、仕事の合間に。習慣にすれば、それほど苦にならない。

次に何をすればいい?

今、あなたが飲んでいる薬の名前を紙に書いてみよう。その中で、上記のリストに該当するものがあるか確認する。次に、眼科を受診して「薬によるドライアイの可能性」を伝える。眼科医は、涙の量や脂層の状態を測る検査(涙膜オスマリティ、脂腺画像)で、原因を特定してくれる。

もしも、薬を変える余地がなければ、保存剤なしの人工涙液+温罨法+オメガ3+加湿器の組み合わせを、毎日続ける。たとえ薬をやめられなくても、症状は確実に軽くなる。

薬は命を救う。でも、目も大切だ。両方を守るための、小さな習慣が、あなたの毎日を快適にする。

薬をやめればドライアイは治るの?

薬をやめれば、70〜80%のケースで症状は改善します。ただし、血圧薬や抗うつ薬など、やめると危険な薬は、自己判断でやめないでください。医師と相談して、同じ効果で目への影響が少ない薬に変えるのがベストです。薬をやめられない場合でも、潤滑と生活習慣の改善で症状は大幅に軽減できます。

市販の目薬はどれがいい?

保存剤(防腐剤)が入っていない「1回使い切り」の人工涙液が最適です。保存剤入りの目薬は、1日4回以上使うと、逆に目の表面を傷つけます。おすすめは「シスターン ユltra プラス」や「ヒアレイン」などの保存剤なし製品。1日4〜6回、こまめに点眼してください。

温罨法のやり方を教えてください

温かいタオル(40〜42℃)を10〜15分、目を閉じた状態で乗せます。その後、指の腹でまぶたの縁を優しくマッサージします。脂腺の詰まりをほぐし、涙の油分を出します。朝と夜、1日2回が目安です。効果は65%の人に確認されています。

オメガ3のサプリはどれを選べばいい?

EPAとDHAの合計量が1日1000〜2000mgのものを選びましょう。魚油サプリで、純度が高く、酸化していないものを選ぶのがポイントです。日本では「オメガ3プラス」や「アスタリフト オメガ3」などが人気です。食事で魚を週に2回以上食べても効果があります。

緑内障の点眼薬と人工涙液、どちらを先に使う?

緑内障の点眼薬の15分前に、保存剤なしの人工涙液をさしてください。その後、点眼薬をさし、また15分後にもう一度人工涙液をさすと、両方の効果が最大になります。同時にさすと、薬が流れて効きが悪くなることがあります。

長谷川寛

著者について

長谷川寛

私は製薬業界で働いており、日々の研究や新薬の開発に携わっています。薬や疾患、サプリメントについて調べるのが好きで、その知識を記事として発信しています。健康を支える視点で、みなさんに役立つ情報を届けることを心がけています。