認可ジェネリックと通常ジェネリック、どう違うの?
薬を切り替えるとき、保険がきくからとジェネリックを勧められることがあります。でも、そのジェネリック、本当に同じものでしょうか?認可ジェネリックと通常ジェネリックは、名前は似ていても、中身や仕組みが大きく違います。この違いを理解しないまま切り替えたら、思わぬ副作用や効き目の変化に悩まされる可能性があります。
認可ジェネリックは、ブランド薬のコピー
認可ジェネリックは、ブランド薬の製造会社が同じ工場で、同じ材料を使って作る、まったく同じ薬です。ラベルだけブランド名を外した、正真正銘の「同じ薬」です。たとえば、Celebrex(セレコックス)の認可ジェネリックは、成分も、添加物も、製造工程も、ブランド版と1ミリも変わりません。アメリカのFDAはこれを「ブランド薬のラベルを外しただけの製品」と定義しています。
なぜこんなものが存在するのか?ブランド薬の特許が切れたとき、製造会社は市場を失うのを恐れて、自社で認可ジェネリックを売り出します。これで価格を下げつつ、自分の製品を市場に残せるのです。だから、認可ジェネリックは、ブランド薬と「全く同じ」ものとして、医療現場で信頼されています。
通常ジェネリックは、似ているけど違う
一方、通常ジェネリックは、別の会社がブランド薬と同じ有効成分を使って作る薬です。でも、添加物(乳糖、デンプン、着色剤など)は自由に変更できます。FDAは、通常ジェネリックがブランド薬と「生物等価」であればOKとしています。つまり、体内で吸収される量が80~125%の範囲なら、問題ないとされています。これは、効果に25%の差があっても許される、ということです。
たとえば、てんかんの薬「ラモトリジン」では、添加物の違いで吸収が変わることが分かっています。ある患者は、ブランド薬から通常ジェネリックに切り替えた直後に発作が再発。認可ジェネリックに戻したら、18ヶ月間、まったく問題なく過ごせたという報告もあります。こうしたケースは、決して珍しくありません。
価格は、どっちが得?
通常ジェネリックは、ブランド薬より80~85%安いのが普通です。一方、認可ジェネリックはブランド薬より10~30%安いだけ。通常ジェネリックより5~15%高いこともあります。
たとえば、コンサータ(メチルフェニデート)の場合:
- ブランド薬:210ドル(30日分)
- 認可ジェネリック:185ドル
- 通常ジェネリック:165ドル
差は20ドル。でも、この20ドルが、副作用や再入院のリスクを減らすための「保険」になることもあります。特に、心臓病やてんかん、免疫抑制剤など、効果の幅が狭い薬では、この差が命に関わるのです。
どの薬で違いが出やすい?
すべての薬で違いが出るわけではありません。でも、次の薬では、認可ジェネリックが推奨されます:
- 甲状腺ホルモン(レボチロキシン)
- てんかん薬(ラモトリジン、フェニトイン)
- 免疫抑制剤(シクロスポリン、タクロリムス)
- 血液凝固阻止剤(ワーファリン)
これらの薬は、体内で微細な濃度変化が効果や副作用に直結します。FDAも、これらの薬では「添加物の違いが問題になる可能性がある」と警告しています。アメリカ神経学会は、てんかん患者への自動置換を2018年に公式に避けるよう勧告しています。
患者の実体験:どちらが良かった?
5,000人を対象にした調査では、通常ジェネリックに切り替えた人の18.7%が「副作用や効き目が変わった」と答えました。認可ジェネリックに切り替えた人は、6.2%だけでした。
よくある不満は:
- 胃の不快感(42%)
- 効きが弱くなった(33%)
- 新しい副作用が出た(25%)
一方、認可ジェネリックの不満はほとんどが「値段が高い」「保険がきかない」だけです。つまり、薬そのものの問題ではなく、経済的な制約が主な障害になっています。
薬局でどう判断する?
薬局で薬を渡されたとき、それが認可ジェネリックか通常ジェネリックか、見分けるのは難しいです。ラベルには「ジェネリック」としか書かれていません。でも、ある方法で見分けられます。
薬のNDCコード(薬品識別番号)を確認するのです。認可ジェネリックは、ブランド薬と同じ製造会社のコードを使っています。薬剤師に「この薬のNDCコードを教えてください」と聞いて、ブランド薬のコードと一致するか確認しましょう。一致していれば、それは認可ジェネリックです。
また、2024年1月から、FDAは認可ジェネリックのラベルに「認可ジェネリック」と明記することを義務付けました。これからは、さらにわかりやすくなります。
医師や薬剤師にどう頼む?
切り替えを検討するなら、まずは医師に相談しましょう。「この薬は認可ジェネリックでも大丈夫ですか?」と聞くだけで、対応が変わります。特に、複数の薬を飲んでいる人や、高齢者、慢性疾患のある人は、切り替えを勝手にしないでください。
薬剤師にも、自分の薬がどのタイプかを確認してもらいましょう。米国では、薬剤師が通常ジェネリックに勝手に切り替えることが法律で許されていますが、認可ジェネリックについては、州によって制限があります。あなたの薬が「切り替え禁止」の薬かどうか、ちゃんと確認してもらいましょう。
結局、どちらを選ぶべき?
簡単な答えはありません。でも、次の基準で判断できます:
- あなたの薬は、甲状腺、てんかん、免疫抑制剤、ワーファリンなど「幅の狭い薬」か? → 認可ジェネリックを選ぶ
- 高血圧、コレステロール、糖尿病の薬など、幅の広い薬か? → 通常ジェネリックで問題ない
- 価格が大きな負担なら、通常ジェネリックでもOK。でも、効き目が変わったらすぐに医師に相談
- 一度でもジェネリックで不調を経験したなら、次は認可ジェネリックをリクエスト
薬は、単なる「成分」ではありません。あなたの体と、その薬との関係です。小さな違いが、大きな影響を生むことがあります。だから、無理に安い薬を選ぶのではなく、自分の体に合った選択をしましょう。
今後の動き
2025年現在、認可ジェネリックは市場全体の約8%ですが、2028年までに12~15%まで増えると予測されています。特に、吸入剤や塗り薬など、製造が複雑な薬では、認可ジェネリックの需要が急上昇しています。また、メディケアのプランでは、認可ジェネリックの情報を患者に提供することが義務化され、利用がさらに広がる見込みです。
認可ジェネリックと通常ジェネリック、どちらが安全ですか?
どちらもFDAの基準を満たしているので、基本的には安全です。しかし、認可ジェネリックはブランド薬とまったく同じ成分・製造工程なので、添加物の違いによる副作用のリスクが極めて低いです。特に、てんかんや甲状腺疾患、免疫抑制剤など、効果の幅が狭い薬では、認可ジェネリックの方が安全とされています。
薬局で認可ジェネリックを頼むにはどうすればいいですか?
薬剤師に「この薬の認可ジェネリックをください」と直接頼んでください。または、「ブランド薬と同じメーカーのジェネリックが欲しい」と言えば通じます。NDCコードを確認して、ブランド薬と同一の製造コードかを聞いてみるのも確実な方法です。
認可ジェネリックは保険がきかないことが多いと聞きましたが、本当ですか?
はい、その通りです。保険会社は通常ジェネリックを推奨するため、認可ジェネリックの自己負担額を高く設定することがあります。でも、医師が「認可ジェネリックが必要」と書いた処方箋なら、保険が適用されるケースも増えています。処方箋に「ジェネリック不可」や「ブランド指定」の欄があれば、そこに「認可ジェネリック可」と書くように医師に頼んでください。
ジェネリックに切り替えたあと、副作用が出たらどうすればいいですか?
すぐに医師に連絡してください。副作用の記録(いつから、どんな症状か)をメモしておきましょう。薬の名前とNDCコードも控えておけば、原因が通常ジェネリックなのか、それとも他の要因なのかを特定しやすくなります。必要なら、認可ジェネリックへの切り替えを提案してもらえます。
認可ジェネリックは、いつから使えるようになりますか?
ブランド薬の特許が切れてから、通常は数カ月以内に登場します。大手製薬会社は、特許切れ直後に認可ジェネリックを投入するのが一般的です。2025年現在、上位50のブランド薬の63%が、特許切れ後6ヶ月以内に認可ジェネリックを発売しています。薬の名前をチェックして、認可ジェネリックが出ていないか、医師や薬剤師に聞いてみてください。