自己免疫疾患の患者のほとんどが、日常の生活を困難にする疲労に悩まされています。ただの疲れではありません。眠っても取れない、体を動かすのが辛い、考えることが難しくなる、そんな疲労です。研究では、自己免疫疾患を持つ人の98%が、この疲労を深刻な問題だと報告しています。これは、健康な人の7〜45%が経験する疲労とは比べものにならないほど、普遍的で深刻です。
なぜ、こんなに疲れるのか
普通の疲れは、運動した後や眠りが足りないときに起こります。でも、自己免疫疾患による疲労は、それとは根本的に違います。たとえ十分に休んでも、朝起きたときからすでに疲れが残っています。ちょっと歩いただけで、翌日は体が重くなり、頭がぼんやりします。これを「運動後悪化」と呼びます。
この疲労の正体は、体の中の炎症です。免疫システムが自分自身の体を攻撃しているとき、IL-1β、IL-6、TNF-αという炎症物質が大量に放出されます。これらの物質が脳のエネルギーを制御する部分に直接影響を与えます。MRIで見ると、82%の患者の脳に炎症の痕跡が確認されています。つまり、疲労は単なる「気のせい」ではなく、脳と体の生理的な変化なのです。
さらに、副腎皮質ホルモンのコルチゾールの分泌が28〜35%減っている人もいます。コルチゾールはストレスに対応してエネルギーを出す役割があります。このホルモンが足りないと、体は常に「エネルギー不足」の状態になります。また、筋肉の細胞の中にあるミトコンドリアがうまく働かず、エネルギー(ATP)の生産が40〜55%も落ちているケースもあります。
驚くべきことに、病気の活動度(関節の腫れや抗体値など)と疲労のひどさは、それほど関係ありません。関節が腫れていても、疲労が軽い人もいれば、病気が落ち着いていても、疲れがひどい人もいます。これは、疲労が「病気の症状」ではなく、「別の病気のよう」だということを示しています。
病気によって違う、疲労の強さ
すべての自己免疫疾患で疲労はありますが、その強さは病気によって異なります。
- 全身性エリテマトーデス(SLE):98%
- 多発性硬化症(MS):96%
- 関節リウマチ(RA):94%
- シェーグレン症候群:92%
- セリアック病:90%
- 1型糖尿病:88%
特にシェーグレン症候群では、78%の人が疲労を「10点中8点以上」と評価しています。関節リウマチの患者の63%は、「関節の痛みより、疲労の方が生活に影響している」と言っています。これは、痛みよりも疲労の方が、人生の質を落とす大きな要因だということです。
疲労を測る方法
「疲れた」という感覚は、他人には見えません。だから、医師は客観的なツールを使って評価します。
- MFI-20:20の質問で疲労の程度を測ります。18.7以上なら「臨床的に重要な疲労」です。
- FACIT-F:慢性疾患の疲労を評価する尺度で、34.5以下なら重度の疲労とされます。
- VAS:0〜10の線で、今どれくらい疲れているかを指で示してもらいます。
これらのツールは、治療の効果をはかるためにも使われます。たとえば、ある治療を始めてから、FACIT-Fのスコアが5点上がれば、それは「効果があった」と判断されます。
どうやって対処するのか
疲労を治す薬はありません。でも、効果のある方法は複数あります。重要なのは、「一つの方法」ではなく、「複数を組み合わせる」ことです。
薬物療法
コルチゾールの分泌が少ない人には、低用量のハイドロコルチゾン(1日10〜20mg)が有効です。35〜40%の人が疲労感の軽減を実感します。
多発性硬化症の疲労には、モダフィニルという薬が使われます。これは、覚醒を促す薬で、プラセボより28%も疲労を減らす効果があります。
また、ミトコンドリアの働きを助けるコエンザイムQ10(1日200mg)を摂ると、29%の人が疲労の改善を報告しています。
生活習慣の改善
睡眠の質を上げる
夜にしっかり眠っても、朝起きたときに「全然休めていない」と感じる人が多いです。これは、体内時計が乱れているからです。毎日同じ時間に起きる、夜はスマホの光を避ける、朝日を15分浴びる--これらを続けるだけで、22〜25%の疲労軽減が見られます。
無理をしない「パーシング」
「今日は元気だから、たくさんやろう」と思って行動すると、翌日はひどい疲労が襲います。これを避けるには、「活動の量を一定に保つ」ことが大切です。たとえば、1時間だけ家事をして、その後は必ず20分休む。これを繰り返すと、体が「無理をしない」リズムを覚えます。患者の78%が、この方法で効果を実感しています。
無理のない運動
「運動すれば元気になる」と思われがちですが、自己免疫疾患の人は、運動が逆効果になることもあります。だから、ゆっくりと、少しずつ始める必要があります。週に3回、10分の軽いストレッチやウォーキングから始め、体の反応を見ながら増やしていきます。うまくやれば、32%の人が疲労が軽減します。
認知行動療法(CBT-AF)
これは、「疲労とどう向き合うか」を学ぶ心理的なトレーニングです。たとえば、「疲れたから何もできない」ではなく、「今日はこの10分だけやろう」と、小さな目標を立てて達成する練習をします。6か月後には、標準的なケアより27%も疲労が軽減するというデータがあります。
一番効果的なのは「総合ケア」
2021年の臨床研究では、1,247人の患者に「薬+認知行動療法+運動+睡眠改善」の4つを組み合わせた治療をしました。12か月後、68%の人が「疲労が30%以上軽減した」と報告しました。これは、普通の治療と比べて45%も効果が高かったのです。
つまり、薬だけ、運動だけ、睡眠だけ--どれも効果はありますが、全部を合わせると、大きな変化が生まれます。
困っていること、解決されていないこと
でも、現実は厳しいです。
多くの医師が、疲労を「病気の副産物」として軽視しています。アメリカのリウマチ専門医の88%が、疲労を定期的に評価するツールを使っていません。患者の76%は、「最初はただの疲れだと言われた」と言っています。
また、効果的な治療は、保険がきかないことが多いです。認知行動療法や専門の睡眠指導は、ほとんどが自費です。68%の患者が、自分のお金で治療を受けています。
でも、変化の兆しはあります。アメリカ国立衛生研究所(NIH)は、2023年に1870万ドルを疲労の研究に投じました。IL-6を抑える薬や、脳を刺激する磁気治療(TMS)が、臨床試験で効果を示しています。2026年までに、世界で初めて「疲労専用の治療薬」が承認される可能性があります。
あなたにできること
疲労は、あなたの「弱さ」ではありません。あなたの体が、炎症と戦っている証拠です。
まずは、自分の疲労を「客観的に」記録してみてください。毎日、1〜10でどれくらい疲れているかを書く。何をしたあとに悪化したか、どんなときに少し楽になったか--それを1週間続けるだけで、自分自身のパターンが見えてきます。
そして、医師に「疲労」を話すとき、「ただ疲れた」ではなく、
- 「朝起きたときから疲れています」
- 「10分歩いただけで、翌日は動けません」
- 「この疲労は、関節の痛みより生活を壊しています」
と、具体的に伝えてください。あなたの疲労は、ただの疲れではありません。それは、あなたの体が叫んでいる声です。
自己免疫疾患の疲労は、普通の疲れとどう違うの?
普通の疲れは、休息で回復します。でも、自己免疫疾患の疲労は、眠っても取れません。運動後24〜48時間後に症状が悪化する「運動後悪化」が特徴で、脳や体の炎症が原因です。単なる疲労感ではなく、生理的な変化が起こっています。
疲労を測るためのチェックリストはありますか?
はい。FACIT-FやMFI-20という専門的な尺度があります。自分でチェックするなら、毎日「疲労度(1〜10)」「活動量」「睡眠時間」を記録してください。3日以上、同じパターンが続くなら、医師に相談するタイミングです。
運動はした方がいいの?
はい、でも「無理」が禁物です。週に2〜3回、10分の軽いストレッチや散歩から始め、体の反応を見ながら少しずつ増やします。急に運動すると、逆に疲労が悪化します。無理せず、「持続できる量」を続けることが大切です。
コエンザイムQ10は効果があるの?
はい。ミトコンドリアのエネルギー生産を助けるため、200mg/日の摂取で29%の患者が疲労の改善を報告しています。ただし、医師と相談してから摂取してください。他の薬との相互作用の可能性もあります。
疲労がひどいとき、どうやって生活を維持すればいい?
「パーシング」という方法が効果的です。1つの活動(家事、仕事、買い物)を終わらせたら、必ず20分以上休む。1日にやるタスクを3つに絞る。無理して全部やろうとしないことが、長期的に生活を守ります。
医師に疲労を相談するとき、何を言えばいい?
「最近、朝起きても疲れが取れない」「10分歩いただけで翌日動けなくなる」「認知機能が低下して、仕事や家事が難しくなった」--具体的な行動と影響を伝えると、医師も理解しやすくなります。病気の活動度ではなく、生活への影響を強調しましょう。